コラム実体験から得たもの 第2話

知らない事が一番の恐怖

第1話より数か月前の話になります。私は電算課(当時はコンピューターの事を電子計算機とも言った)の管理職でした。

私の職場を社長と共に見に来たコンサルタント先生は朝のミーティングの時に私に言いました。「あなたはコンピューターばかり相手にしていると将来使い物にならなくなってしまう。会社の事を知るいい機会だから、これから出荷倉庫に掛かって来る外線電話を全部受ける仕事を与えます。今の管理職の仕事は部下に任せて直ぐ場所を移動しなさい。社長これで良いですね。」と突然指示を下され社長も承認し、その日のうちに出荷倉庫の事務所に席が作られ外線電話を取る事になりました。

当時は電話交換手の女性オペレーターがおりまして、結局そこからしか入ってこないのですが、「○○会社からです」位の言葉で繋がれるので、直通と同じと思いました。さて、直ぐに電話が入りました。大きな取引先の名前は知っていたので張り切って電話を取りましたが、最初の一言が「○○だけど、遅れてる○○部品はどうなったんだ!ラインが止まるぞ!」こんなお叱りの電話でありました。未納!ラインが止まる!は自動車業界では一大事の話です。直ぐに出荷担当者のところに駆けて行き、「大変です。ラインが止まると言ってます」と伝えました。出荷担当者はベテランで、「あいつ何言ってんだ、昨日の晩に着いてるって言ってやれ!」こんな回答でした。私は急いで返事の電話をしましたが、どこの便で誰宛てに送った等質問され又倉庫に飛んでゆきました。初めての電話対応で大いに子供の遣いをしてしまいましたが、こんな風にスタートを切りました。

女子社員も上手く出来る仕事なのに、私はそれ以下だなと思いながら10日も過ぎたら何とか顧客と出荷倉庫の間のやり取りが分かるようになりました。その間も改善活動で午前中動き回っておりましたので課の仕事もその時一緒に行うなど多少の要領をつかんできました。

更に1週間余り過ぎたころ、コンサルタント先生が来て電話交換業務の終わりを宣言しました。コンサルタント先生は、「電話取りしていて何か分かったか?」と質問され、私は、「初めは外線取るのが怖かったけど、慣れてくればどこも一緒だね」など、頓珍漢な回答をしたように記憶しています。

コンサルタント先生はこの仕事をさせ理由を「あなたは電算課に長くいる人じゃないし、別の組織に異動したら今みたいになるね。怖いという事は知らない事から来るものだから、異動したら早く新しい仕事の分母を知ることだ。例えば営業なら取引先、部署、担当名、質問される事など予め分母となるものを知っておけば電話が来てもその範疇で答えて行けば良いわけだから、怖さは無くなるよ。仕事は分母ぶんの分子でするもの。」と説明しました。

私は頓珍漢な回答はしましたが、考えてみればそれに近いことをしていたような気もします。本当にこの意味が分かるためには、一度失敗してみるしか無かったのかと、でも私にとってこれは成功例だったのです。

以上