コラム実体験から得たもの 第4話

段取りの勝利

第3話での工場の通路確保に成功し、結果、工程の仕掛品まで激減したことは良い副作用でありました。この大きな改善に注目した社長から、間もなく出荷倉庫の製品棚配置を全面的に変える構想が打ち出されました。
理由は、倉庫では、製品は自動車の取付け分類ごとに保管をしていますが、コンピューターの導入で製品番号の管理が容易になった事から、製品番号順に棚を配置することで、不慣れな担当者や専任者不在でも迷わずピッキングが出来るようにする為と説明がありました。

私は、朝の会議上でコンサルタント先生から棚再配置の責任者に指名されました。その時、偶然に在庫品移動方法のアイディアが浮かんだのです。その午後管理部長に呼ばれ、本件実施日と当日は何人必要かを尋ねられたので「1週間空けた次の土曜日で、作業に100人預けてくれれば2時間で終わらせます」と言うと、馬鹿にしたように、「素人にそんなに預けられるか」と一蹴されました。では何人で、という事になり、30数人を休日出勤で協力して頂けるうえに、その中の若手1名が今日から手伝ってくれる事になりました。

製品品目数は約1,500で、大小の段ボールで倉庫棚に保管してあり、ダンボールの箱数は5,000~6,000位と推測します。

初めに今の配置図と新しい配置図を作りました。新しいほうは、棚ごとに製品番号を表示する必要があり、荷姿や段ボールの数を考慮し、図面上で棚スペースを決めてゆきます。次に新棚に付ける製品番号札を作成しました。棚卸データーからコンピューターを使い、プリンターで印字した製品番号一覧を、拡大コピーして札に貼ったので、かなり効率よく作ることが出来ました。(注:当時のプリンターはインパクト式で拡大印字は出来なかった)

実施日数日前の昼休みに、協力者に集まってもらい作業の説明会を開きました。私は「皆さん、当日は自分の担当する棚にある製品段ボールを、今から渡す倉庫配置図にある棚の製品番号札の前まで持って行って、通路に置いてください。自分の担当する棚に段ボールが無くなったら作業は終了です」と申し上げました。その後、棚に収めるのは倉庫担当者の仕事にしました。これが私の考えた移動方法でした。

実施日までの間に、私は若手と新棚へ製品番号札の取り付けを完了し、当日を迎えました。札の取り付けには連日真夜中まで掛かりましたが、これが今回の肝であることが分かっていたので頑張りました。

当日は管理部長も来ており、私がしくじるだろうと踏んで、その時は出張る様子でした。9時に、私の開始宣言で一斉に作業が始まりました。初めの一時間は段ボールを持った人が通路に溢れ、「邪魔だ」とか、「どかせ」とか、大声をあげながら作業をしていたので傍から見れば大混乱と映った事でしょう。

私は、コンサルタント先生が話していた「責任者は周りが動いている時は、中心でじっと止まって事態を観察し、周りが止まったら自ら動き回って観察しなさい」という言葉通り、同じ場所に立って作業の観察をしていました。

ちょうど1時間が過ぎたあたりから人の動きが緩慢になり、罵声も消えて、粛々と移動作業が行われているように見えてきました。よく見ると、自分の棚が空になった人が出始め、その人達は勝手に休憩に行っている様子でした。そして2時間が過ぎる頃には誰の目から見ても終わった雰囲気が漂っていました。そこで終了宣言を出し、全員で倉庫の掃除を行い12時に解散となりました。

最後まで出張るつもりでいた管理部長は、30数人が3時間足らずで、混乱もなく作業を終えたことを見て、お前は新しいリーダーだと言って帰ってゆきました。でも、これはリーダーの活躍ではなく100%段取りの勝利でした。

以上