コラム実体験から得たもの 第7話

目的と手段

コンサルタント先生はメンバーが仕事に詰まるとこの言葉を使いました。「床で細かい事ばかり見ているから方向が分からなくなるのです。そういう時は少し高い壁に上って下を見ると道が見えてきます。それでも分からなければ天井に上って見てください。本当にやるべき事が見えますよ。」と。

そのころの私の上司は、銀行の元支店長で、取締役部長として執務を行っていました。その人の口癖は、「個人ごとに決められた目標は一つひとつを完全に達成することで会社目標が達成できる」であり、私も頂いた個人目標は全て達成することが正しいと愚直なまでに信じていました。その後この話はすっかりと忘れていました。

10年後に飛びますが私は転職し、次の会社で上場準備のために経営企画室の責任者として、社内インフラ整備や原価計算の仕組み作りを進めていました。経営計画策定も重要な仕事で、上場後を意識し、証券会社や監査法人の先生方の指導のままに、会社目標が部門、個人へと繋がって展開する、正に絵に描いた様なものを作っていました。又、管理職には経営計画を達成するための進捗会議を定期的に行っていました。

事業年度も後半になったころ、営業部の担当者が私のところに相談に来て、「今年度の個人目標を課長から3つ貰いました。しかし、現在2つは大幅に達成していますが、1つが全くダメです。今のままで、この一つに集中すると後の2つも危なくなりますが、3つ必ずやらなくてはいけませんか。成績にも影響しますか。」と、こんな質問でした。

私は、この時に何故か10年前のコンサルタント先生の話を思い出しました。彼に「この3つの目標を達成した先にどんな姿があるの?」と聞くと、彼は「売上高の達成だと思います」と返答、「では何故3つの目標なの」と質問、「課長が担当販売先のグループを3つにまとめ、夫々に目標を決めた」となりました。彼は、10年前の私と同じで、言われたことは全て100%しなければならないと信じている様子です。

私は彼に「与えられた3つの目標は、その上の売上達成の為の手段だから、それにはもっと良い方法があると課長に提案したらどうか。達成の為の手段はいくらでもあるのだから」と話しました。

後日談で、「課長は3つ全て達成しろと言っていましたが、新提案をしたら部長と相談して自分の実施計画を修正してくれた」との事でした。真の目的は1つ、手段は無限にあるという事を、コンサルタント先生は目標が見えなくなったら壁に上ると表現していたのだと想像するのです。

以上