コラム実体験から得たもの 第8話

コストって何ですか?

コンサルタント先生はガラスの汚れや壁の傷などが嫌いな様でした。当時、工場では、製造部、管理部、開発部、工務部、品質管理部、外部委託業者等が夫々分担して清掃をしていた様に記憶しています。勿論、改善プロジェクトメンバーは清掃の大きな部分を担っていました。

コンサルタント先生は工場を見て回り少しでも汚れていると直ぐに清掃する様に指示をします。それと同じように、工場の壁にフォーク車の当て傷など見つければ補修の指示をしました。工場の通路を作った後は随分と当て傷は減り、効果があったと実感できましたが、それでもゼロにはなりません。我々改善メンバーも見て回りますが、先を越されてしまっていました。

気が付く度に呼び出しが掛かるので、一回にまとめて修理や清掃の指示を貰えるように話に行きました。先生は「ついでに、まとめて、一緒に、の考え方は良くない。その考えが進むと、問題が起きても会議までに整理して、まとめて発表しようと考えるようになるし、手当が遅れれば、更に問題を生む要因になる。問題があったらオープンにして直ぐ行動を起こすことが何より大切」と言いました。でも、私は「まとめてやった方がコスト安になって良いと思います」と主張したら、先生は「本当にコスト安になりますか?コストとは何ですか?掛かる費用だけの事ですか?皆さんのやる気や、機会損失、信用はコストではないのですか?」と逆質問をされてしまいました。

考えてみれば、私の知りえるコストは会計に計上された費用の事で、目に見えない信用や機会損失はお金に変わった時に初めて分かるものです。会社の改善活動をしている今、将来発生する可能性があるコストは、分かった時に削減する行動を起こすしかありませんし、その為の改善活動であったはずです。

このころ工場にIE(インダストリアル・エンジニアリング)部門が立ち上がり、細かい作業毎の時間管理が始まっていました。しかし、会社全体のコストを見て行く部署はありませんでした。先生の話を反芻するうちに、工場では夫々の部門が個々に最適コストを目指して改善を行っていますが、それらを全て繋げて見た総合コストが本当に最適コストと言い切れるのか、いささか疑問が生まれてきました。

その後になりますが、私は異動で電算課課長から経理課と、新設された原価管理課の課長を兼務することになります。この両部署を経験することによって、私はコストについて、より深く考えて行くようになりました。それは、私が35歳、今から30年ほど前のことでした。

以上